NPO法人 視覚障がい者国際協力協会(ICA)

視覚障がい者の自立を目指して

あいか通信74号(2014年5月号)

            ケニアに通い続けて21年目

 

                                理事長 金治憲 

 風薫る五月、皆さまいかがお過ごしでしょうか。私は只今この20年通い続けてきたケニアのナイロビでこの文を書いています。今のここナイロビでは、寒さに向かう時季とはいえ、日差しの中に立つと日本の真夏といったところです。でも、いったん日陰に入ると、まさに日本風に『風薫る5月』という感じです。

 振り返ってみると、初めてのアフリカ出張では、機内から緊張のし通しでした。小雨に煙る早朝のナイロビ空港に降り立つと、銃を持った兵士たちがうろうろ、同行の芦原さんが、カメラを取り出すとすぐさま兵士たちがとんできて「撮影禁止!」との鋭い声、一瞬心臓が縮み上がりました。外に出て、出迎えてくれた進藤さんの声が聞こえた時には、心底ホッとしました。こんなことが次々と浮かんできて書けば切がありません。

 さて1994年、タンザニアからの帰途に立寄ったKSB(ケニア盲人協会)で、当時の所長、ウイルソンさんからアフリカの視覚障害者ができる仕事を作って欲しいと頼まれたのをきっかけに、ケニアからも3人の盲留学生を受容れ、2人があん摩・鍼・灸師の資格を得て帰国しました。

 2004年からはその3人を通訳に頼み、現地で公募した10名を対象に、あん摩講習を開始してまる10年が経ったわけです。その間2009年からは、MTIB(マチャコス視覚障害者技術訓練校)から、青年海外協力隊員講師の指導を受けた卒業生が何名かづつ講習に参加するようになり、ICAの受講生は22名となりました。この中には出産や就職を機に講習に来なくなった人もいますが、彼らのうち約3分の2の人たちが自立しており、ICAとしては視覚障害者の自立を目指す、とした当初の目的をほぼ達成できたものと考え、これを機に今までの講習を一旦終了することにしました。

 とはしたものの、今後、あん摩セラピストとして生きていこうとする彼らにはこれからも研修は必要です。治療院開設が実現できれば、そこを、彼らの臨床研修の場として、学ぶ意欲のある人の要求には応えたいと考えていますが、今のところ実現の見通しは立っていません。しかし、治療院開設は彼らの技術向上のためには欠かすことのできないものです。引き続き努力してまいります。

 この十年、あん摩技術の講習を続けるなかで、受講生たちがどうにか自立していっているのを見てきました。彼らはあん摩を学ぶ以前から、電話交換手や、編み物、パソコン、皮加工など学んだけれど結局自立に結び付いたのは、あん摩技術であった、と喜んでくれています。ICAとしては、ケニアでもあん摩が視覚障害者の仕事として適職の一つであることを、ますます確信しました。

 そこで、今年度からは、次の段階として、ICAが活動を終えた後もケニア人あん摩指導者によってあん摩がケニアに根付き、一人でも多くの視覚障害者があん摩で自立できるように、全力を尽くして参りたいと思います。

 そのために、まず、KISE(特別支援学校教員養成所)をパートナーとして、あん摩指導者養成コース開設に正式に取り組むことにいたします。

 これは、今まで実施してきたあん摩講習とは全く違います。というのは、今までは、ICAが方針をたて、そのように実施すればよかったのですが、これからは、相手があることなので、こちらのペースだけではことは進みません。ケニア政府、教育省をはじめ関係機関の理解と協力を得ながら進めていかねばなりません。準備の段階にある今、既に前途多難の感あり、で、太平洋を帆掛け舟で渡り始めたような気分ですが、何とか皆さまのご支援を得て、乗り切りたいと思います。

 

 最終ページに昨年度の活動計算書を掲載いたしました。

 昨年は100万円を超える赤字でした。4月から消費税が上がり、年金は削られ、医療費負担も増え、私たちの生活はますます厳しくなる一方です。このような時に今年度のご寄付をお願いするのは大変心苦しいのですがICAの果たす役割をご理解の上、一人でも多くの方々からご協力をお願いできれば幸いです。

 長年の皆さま方のご支援で、十数名のケニアの視覚障害者が自立を果たしています。ちなみに、ナイロビ在住のエドナさんは、あん摩で12歳を頭に4人の子どもを一人で育てている肝っ玉母さんです!  

皆さま方のご健康をお祈りいたします。

*************************************

 

         受講生たちの今  ― ポールとパメラ ―

 

 ポールさんとパメラさんは32歳 (前後) の夫婦です。元々はパメラさんの方が2004年からのICAの受講生、ポールさんは2009年、初めてのMTIB(マチャコス視覚障害技術訓練校)あん摩/指圧コースの卒業生です。青年海外協力隊員1代目講師、五味哲也さんの指導を受けて卒業の後、ICAの講習に参加しました。

 二人はあん摩技術を学ぶ以前、MTIBでポールさんは皮加工を、パメラさんは編み物を学びました。二人はこの時からの知り合いだったのでしょうか? 肝心なことを聞くのを忘れてしまいました。

 パメラさんは出産後も1度受講しました、ポールさんも2度受講しましたが、就職をして参加しなくなりました。彼らはナイロビ在住だったので、他の受講生に時々様子を聞いてはいましたが、今年2月のケニア訪問の際、私たちのゲストハウスまで、会いに来てくれました。今は出張治療をしているそうです。

 電話をもらって、迎えに行くと遠くの2人の足元に小さな影、さらに小さなもう一つの影がチョロチョロしながら、ゆっくり近づいて来ます。レイヴィス、6歳の男の子、とエスター、2歳半の女の子でした。エスターの方は、はにかんで両親の脚の間からチラッ、チラッとこちらを見ていましたが、ゲストハウスの門を入ると門番のおじいさんやメイドさんに声をかけられ、部屋へ着くと、早速レイヴィスとベランダに出たり入ったりと、すっかりリラックス。

 なにはともあれゲストハウスに来た人は、まずはキム先生にあん摩をします。ポールさんがキム先生と話しながらあん摩を始めると、早速レイヴィスが、お母さんと私に向かっておしゃべりを始めました。

 真黒い大きな瞳をキラキラさせて、彼の乗ったスクールバスが事故に遭った話をしてくれました。表情豊かに身振り手振りを入れて、ゆっくりと、きれいな英語で私の目をじっと見つめながら話してくれるので私にもよく解ります。彼は素晴らしい語り手でした。おかげで短い時間にもかかわらず私たちは良い友達同士になれました。

 一方のエスターの方の素晴らしい感性にも驚かされました。あん摩の時に使う「手ぬぐい」を、ICAの支援者のお一人、宮崎加子さんが、着物を解いてきれいに糊づけして講習の度に提供してくださっているのですが、その一枚を出した瞬間、「ワー素敵!」とエスターの声。浴衣地に紺色の葉っぱの小紋です。私もきれいだなーと思いながら出したのですが、2歳半のケニアの女の子にそんなに感激してもらえるとは夢にも思わなかったので、びっくりしてしまいました。

 ポールさんとパメラさんは近いうちに家を建てる予定だということでした。出来たら是非来てください、MTIBで教わった五味さんにも是非来て欲しい、と言っていました。素晴らしいですね。もう完成したでしょうか。

                             (事務局:森山)

 

*************************************

 I

経常収入の部

1.会費収入

2.事業費収入

3.寄付金収入

4.雑収入

 

         110,000

           0

       3,279,630

            8,801         

 

経常収入合計

        3,398,431

 II

経常支出の部

1.事業

2.管理費

 

        3,050,757

        1,558,329

 

経常支出合計

        4,609,086

 

経常収支差額

      -1,210,655

III

その他資金収入の部

                0

VI

その他資金支出の部

                0

 

当期収支差額

      -1,210,655

 

前期繰越収支差額

        4,616,340

 

次期繰越収支差額

        3,405,685

 

**********************************

※ 5月後半のケニア訪問で、会報の発行が遅れました。お詫びいたします。

 ご報告は、後の号でいたします。

※ 掲載予定でした、山平さんの ⑧ボランティア活動 2農業調査(後半)

は紙面の都合上次号へ掲載いたします。お楽しみに。