NPO法人 視覚障がい者国際協力協会(ICA)

視覚障がい者の自立を目指して

あいか通信67号(2013年3月号)

                                                                  あとおし

 

                           理事長 金 治憲

例年になく寒い冬だった、と思いきや突然の春、桜の開花は観測史上2番目の早さとか・・・ほんとうに不順な天候ですね。皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか。

ICAの今後のことをいろいろと考えている最中に、一通の手紙を受取りました。

 

 拝啓

突然お手紙さし上げ申し訳ございません。私はYと申します。

目黒区東が丘から世田谷区船橋に移転しましたが今度は海外移住することになりました。

そこで「寄付」のことですが・・・一年間五万円として、二十年分百万円をまとめて「寄付」させて頂きたいと思いました。金さんも色々大変でしょうが、この先出来る所まで協会を続けて行ってください。領収書、あいか通信はもう送らなくて結構ですので。「寄付」が届いた頃には、もう日本には居ませんので。

どうぞお元気で。さようなら。

 敬具

この手紙を読んで直ぐに電話をかけたのですが「この電話は現在使われておりません」というメッセージが繰返されるだけでした。せめてお礼の一言でも伝えたかったのですが、既に連絡はとれなくなっていました。

Yさんは、26年前『アジアの若い盲人の‘光’に---(盲)留学生を自宅で世話』と、新聞で紹介された私の記事を読まれて以来の協力者でした。

JICAの受託期間を終えて(つまりJICAからの活動資金援助も無くなった状況ということです)1年目が過ぎようとする今、当初からの目標を達成するために、限られた予算のなかで、今後どんなことを最優先すべきか等々、考えあぐねている時の、Yさんからの思いがけない申出です。

手紙に書かれたように、たとえ私が今後20年間頑張るのは無理な話だとしても、協会に対するYさんの熱い思いには何としても報いたい、と心底思いました。こう考えていると、以前にもこんな体験があったなぁ、と当時の状況がフッと浮かんできました。

日本の盲学校で、留学生たちが充実した学校生活を送るためには、日本語の習得はもちろんのこと、言葉によるコミュニケーションも未だ不十分なうえに、見様見真似ができない彼らにとって、まずは盲学校入学前の準備段階の教育が重要です。つまり日本の日常生活、寮での共同生活に慣れてもらうことが何よりも大切なのです。

入学前教育ができる場所が欲しい、と日々念じていた折、その場所を提供してくれる人が現れ、留学生のための施設建設が実現したのです。今回のことも考えると、何故だか節目ごとにどこかから背中を押されたような不思議な気がしました。ありがたいもので、元気が湧いてきます。

さて、前号でも皆さんにICAへのご意見、ご希望、アドバイスなどありましたらお寄せいただきたいとお願いしました。

そこで先日、宝塚市在住の会員、山平さんが東京出張の折、会う機会を得ました。その時のケニア体験の話がとても面白く、皆さんにも是非話して欲しいと思い、この通信への寄稿をお願いしたところ、快く引き受けてくれました。今号から連載します。どうぞお楽しみください。

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皆さん初めまして。私は視覚障がい者用の機器を扱う株式会社タイムズコーポレーションで営業マネージャーをしております、山平健人と申します。この度ご縁をいただき、あいか通信に寄稿させていただきます。

実は私はケニアで半年ほどボランティア活動をさせてもらった経験があり、金さんからぜひそのことをあいか通信に掲載したいとのご希望をいただきました。

拙い文章ではございますが、私と金さんとの出会いや、私のケニアでの体験について執筆させていただきました。ご興味のある方はどうぞご一読ください。

 

① デイジー再生機が繋いでくれた、金さんとのご縁

皆さんはDAISY(デイジー)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

花の名前ではありません。DAISYとは、Digital Accessible Information Systemの略で、視覚障がい者など、墨字の印刷物を読むことが難しい人たちのための、デジタル録音図書の国際規格です。デイジー規格で作成された録音図書はデイジー図書と呼ばれ、視覚障がい者の皆様に便利に使われています。

デイジー図書を聞くには、専用の再生機が必要になり、弊社では『ブックセンス』という韓国のHIMS社製のデイジー再生機の日本語版の開発に協力し、日本国内で販売しています。

さて、この『ブックセンス』ですが、すべての操作にガイド音声が出るようになっており、視覚障がい者が使いやすいように設計されています。デイジー図書の再生以外に、音楽の再生やテキストデータ、ワード文書、点字データの読み上げや、音声の録音ができるなど、なかなかの多機能で、ガイド音声はあっても使いこなすとなるとなかなかハードルの高い機械です。

お客様から使い方に関するご質問を良くいただきますので、お客様と弊社との距離を縮めてくれている機器とも言えます。

ある日のこと、一人のブックセンスユーザーであるお客様から使い方についてのお問い合わせをいただきました。音声の録音方法が分からないというお問い合わせです。電話の声からすると、50歳から60歳くらいの男性ではないかと想像していました。明日から海外に行くので、録音のテストをしておこうとしたところ、録音できないとおっしゃられます。明日から海外に行くのに、今録音テストをするなんて、なかなか旅行の準備の良い方です(笑)。

操作方法をご説明すると、以外にも?スイスイとご理解いただけました。一通りの操作説明が終了してから、『ちなみにどちらに行かれるのですか?』とお伺いしたところ、『ケニアです。』とのお答え。

その瞬間私のテンションが一気に上がりました。実は私は2003年に半年間ケニアでボランティア活動をしていたことがあり、ケニアにはかなり思い入れがあるのです。

その後お客様とケニアの話で大変盛り上がりました。それが私と金さんとのご縁の始まりです。

 

②  ケニアへの道のり

多くの方がそうであるように、私は動物が好きです。その中でも特にゾウが好きです。ゾウが好きになった理由はハッキリとは覚えていませんが、ゾウは絵本などでもよく取り上げられて、小さなころから、大きくて優しい生き物の象徴的な存在として私の中にあったように思います。ゾウ好きの私がアフリカに興味を持ったことについては、説明の必要はないでしょう。

アフリカに興味を持つと、動物以外にアフリカについて色々な情報を知ることになりました。飢餓や紛争、さまざまな病気など、アフリカには未だ多くの人を苦しめる問題が数多くあります。野生動物への憧れと同時に、それらの問題を知ることで、私はますますアフリカへの興味を強くしていきました。

高校に入り、サッカーに明け暮れる毎日を過ごしていたある日、当然のように進路の話が出てきました。それまで将来については何も考えていなかった私ですが、周りの友達が真面目に進路について考えていることを知り、焦りました。

それまで何もしていないのに今更焦ってもあとの祭りです。そんな時、たまたま教室で私の前の席に座っていた女の子が、『英語だけでも勉強しておいたら、世界中の色々な人と友達になれるし、役に立つよ』と言ってくれました。

素直な?私は、『なるほど!これからは英語の時代だ』と、それからは英語だけは真面目に勉強しました。そうして徐々に語学の面白さにハマっていきました。語学をもっと勉強したい、そう思った私は外国語大学を色々と調べてみました。

そうすると日本で一つしかない学科を発見しました。それが大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)のスワヒリ語学部だったのです。スワヒリ語は主にケニアなどアフリカ東部で共通語として使われている言語です。日本で一つしかないということと、それが憧れのアフリカの言語ということで、私はスワヒリ語学科を受験することに決めました。

さて、スワヒリ語学科を受験することを決めたのは良いのですが、肝心の学力が伴っておらず、1年余分に勉強したにもかかわらず、結局合格することはできませんでした。

しかし、それが良かったのかどうか分かりませんが、別の大学の総合政策学部という学部に無事に入学することができ、語学だけでなく、幅広い視野と、問題解決へのアプローチ法を学ぶことが出来ました。

大学3年になると就職活動が始まります。私も他の学生同様に就職活動を始めました。しかし、他の学生と同様に大きな流れに乗って今就職する必要があるのだろうか?という考えと、自分が勉強してきたことを実際に現地に行って実践したいという考えから、就職活動をやめて、ケニアにボランティアに行くことに決めました。

このように書くと格好良いのですが、実際はなかなか就職が決まらなかったのと、まだ会社という組織に属したくないという気持ちがあったのも事実です。

 

次号 ③ ポレポレ、ハクナマタタ、ラフィキ へ、つづきます。

お楽しみに。