NPO法人 視覚障がい者国際協力協会(ICA)

視覚障がい者の自立を目指して

あいか通信63号(2012年7月号)

 

          暑中お見舞い申しあげます

                            理事長 金治憲

東京は連日33℃を上回る暑さです。‘ 爽やかなナイロビの風’と以前に書いたことがありますが、最低気温が15℃、最高が23・24℃程度のナイロビから帰ってきた身には東京の暑さは異常としか思えません。皆さまお変わりありませんか。

前号で今年度ご寄付のご協力をお願いしましたところ多くの方々からご厚志をお寄せいただきました。心より感謝申し上げます。

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             治療院開設支援事業難航

さて、今年度のケニア向け事業は前号でもお知らせしましたように、

1.あん摩講習実施

2.教材配布

3.治療院開設支援事業

の、三つです。

その中でも、現在、最も力を入れるべき局面を迎えている事業が、最後の治療院開設支援事業です。これはICAの最終目標の中の一つでありました。

昨年8月の講習でケニアを訪れた際、日本政府が在ケニア日本大使館を通して現地のNGOに提供する『草の根無償資金』があり、これをカウンターパートナーのSOKが申請して、それが受け容れられれば、『草の根無償資金』を得ることができ、治療院建設が実現できる、ということが分かりました。

この制度は、あくまでも現地のNGO(非政府組織)が申請し、完成後はそのNGOが管理・運営まで責任を持って行うことが前提となっているものです。

幸いなことに現地のNGOの役割はカウンターパートナーであるSOKが当てはまります。

早速SOKと話し合って、治療院の管理・運営はSOKが担当、あん摩技術に関することはICAが担当するということを双方で合意、確認し、ICAは10月にそのための保証書を外務省宛に提出しました。後はSOKが進めて行くのを待つばかりでした。

ところが、その後の進行状況をメールで尋ねても、急がせても、はかばかしい反応が得られません。申請の締め切りも迫ってきている状況の中、ついに業を煮やして、この間、6月、7月と二度現地に行ってまいりました。この申請作業にあたって、SOKはまず治療院建設のための借地探しから始めなければなりませんでした。

せっかく見つかっても土地提供者との調整が難しかったということで、結局ICAの方で現地の方の協力を得て、ここを借りることにしよう、というところまで進め、SOKは設計図を引くところまでいったのですが、最終的にはうまくいきませんでした。

しかし、ICAとしては、簡単にあきらめるわけにはいきません。SOKには、今も事務所のキッチンを受講生たちがクライアントを治療する場所として提供してもらっていますし、ケニアでの講習の度にお世話になっています。

それでも大変残念なことではありますが、やむを得ません、治療院開設支援事業に関してはカウンターパートナーを変えてでもこの事業を進めたい、と考えるに至りました。

そこで、私が1994年にタンザニアから日本へ留学を希望している青年の面接に行った折、タンザニアからの帰りに訪問した『ケニア盲人協会』(Kenya Society for the Blind 略称KSB)を訪ねました。

ここは1956年に設立された慈善団体でケニアの視覚障害者の福祉、教育、雇用の促進、リハビリなどの活動をしている全国的な組織です。当時のディレクターに「ケニアの盲人に仕事を作って欲しい」と言われました。

これが、ケニアと私の繋がりの始まりでした。その後KSBを通じて3人のケニア人盲留学生を受け容れ、現在の、ケニアでのあん摩講習が始まったのでした。

現在のディレクター 、ジュリアナさんに治療院開設の現在の計画を相談しました。彼女は大変喜んで「ほんとにいい時期に来てくれた」と言うのです。その理由は、KSBでも、ちょうど今8階建てのビルの建設を予定しているとのこと。その中には会議場やホテルやプールなどの施設を作ることにしている、その一部を治療院にしてはどうでしょうという提案でした。今日にでも日本大使館へ行って担当者にも一緒に相談にのってもらいましょう、と言うのです。

ところが、日本大使館によると、『草の根無償資金』で建てられる治療院はあくまでも治療院として独立した建物を建設するのが第一の条件であって、他の建物の一部に治療院を開設するのは認められないというのです。なんとも残念なことです。一同ほんとにガッカリしました。

これに対しジュリアナさんは、KSBのこの建設事業は長い時間かけて構想したもので、ようやく3つの銀行からの融資も決まったところなので、あらためて設計図を引きなおすというのは大変難しい。大変良い事業だと思うが、少しじっくり考えさせて欲しい、ということでした。

以上、ご報告しましたように、治療院開設は難航しています。が、焦らず良い方向へ進めるよう、じっくりとこちらも考えていきたいと思っています。

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              その後の受講生たち

今年2月、第2プロジェクト最後の講習では、第1、第2プロジェクトを通じ、初めて街に出て(於:ナイロビ市内、ナクマット・ジャンクションという大きなショッピングモールの中)通行中の人々に呼び掛けて、あん摩の効用をPRしながら実際にその場であん摩を体験してもらう、というデモンストレーションを実施しました。

先にも通信で報告しましたように、通行中の124名の方たちがあん摩を体験してくださいました。その時、あん摩の効用を書いたビラの裏に受講生たちの名前・電話番号・居住地域を入れたものを配りました。

そして体験者の67名の方たちが‘ 気持ちが良かった・全身やって欲しかったよ・頑張って!・・・’などなど、好意的なコメントを残してくれたのです。

その後、何らかの反響があったのかどうか、現在の生活状況はどうなのか知りたくて、6月のケニア訪問の際、全員に電話できいてみました。

デモンストレーションに参加した13名の受講生のうち、ナイロビ在住者は10名、地方在住者は3名。(ナイロビで通行人に向けてのものですから、当然地方在住者には無理な話です。この地域間格差の問題はICAにとって実に頭の痛い問題であり、大きな課題です。)

結果、ナイロビ在住の6名から、デモンストレーションをきっかけにクライアントが増えたという話を聞くことができました。下記の表のようです。

 

No.

電話

件数

クライアントへ

繫がった人数

講習受講状況

 3

3名

2004年~

 10

17名

2004年~

 4

1名

2004年~

 4

2名

2004年~

 3

3名

マチャコス卒後2010年~

 2

1名

マチャコス卒後2011年~

 

以上、これをどう見るかということですが、ICA としては、実際のところ、街でのデモンストレーションの効果は確実に表れていると思います。

No.2の電話件数10件、クライアント17名、には驚きました。彼女は講師全員が認める技術力があり、また努力家です。友人、知人を連れて来るクライアントが何人かいたことで17名という数になったということです。

皆、それぞれにクライアントを増やしてはいますが、こうしてクライアントを得たものの、旅行者であったため短期でいなくなったとか、季節によって移動してしまったということもあったそうです。当然あることでしょう。

これからの講習時にも街に出て行うデモンストレーションは是非続けたいと思いました。また、セラピストとしての彼らの経験年数から結果をみても経験の大切さが明確です。細々と続けて来た講習ですが、受講生たちが、あん摩技術を習得することによって確実に自立していっていることに大きな喜びと手応えを感じ、勇気づけられました。

しかし、一方、ナイロビ市内でも未だ安定した仕事が無く苦戦中の受講生たちもいます。マチャコスを卒業して1~2年というところですが、まだまだこれからです。

治療院開設が実現できれば、そこを拠点に彼らの技術指導も日本から講師が出かけていく年1~2回の講習だけでなく、1ヶ月に2週間くらいの頻度で研修することもできるようにしたいと計画しています。

しかし、現状は報告しました通り難航中です。彼らに、早く確かな技術を習得してもらうためにも、治療院開設を是非実現したいものです。

 

                               (事務局)