NPO法人 視覚障がい者国際協力協会(ICA)

視覚障がい者の自立を目指して

あいか通信62号(2012年5月号)

                治療院建設

                            理事長 金治憲

173年ぶりの金冠日食、スカイツリーの完成など、このところ明るい話題がメディアを賑わせていますが、皆さまお変わりありませんか。おかげさまで無事に平成24年度のスタートを切ることができました。

今年度ケニア向けの事業は3つあります。

  1. 例年どおりケニアでのあん摩講習実施
  2. 教材配布。これはケニアに限った事ではありませんが、殆どの視覚障害者は自分用の点字機さえ持っていません。点字本に至っては言わずもがなです。そこで、アメリカで発行された『Body Systems』という本とICAが作成したあん摩の短期講習用のテキスト、骨格模型を、あん摩講習受講生とマチャコス校であん摩を学んでいる学生たちに彼らの自習の助けとなるよう贈ります。
  3. 治療院建設。これは日本政府からの『草の根無償資金援助』を受けて実現するものです。昨年からICAの現地カウンターパートであるSOKと共に取り組んでいるものですが、今年度中には着工できるようにしたいと考えています。

今号最後に、平成23年度の収支計算書を掲載しています。

東日本大震災以来、皆さま、あちこちで寄付をされることが多かったのではないかと思います。にもかかわらずICAへも変らずご寄付いただき、心より感謝申し上げます。今回も勝手ながら通信に振替用紙を同封させていただきました。

いつもながらご寄付のお願いは大変心苦しいのですが、どうかご協力をよろしくお願い申し上げます。

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 ケニア視覚障害者の友人達の研修を横側から顧みて 

                                       ICA名古屋支部事務所 青 山 章 行

1、今年2月下旬のケニア講習で、NPO法人ICA事業のケニアにおける3年間に亘る第二プロジェクトは終了した。終了にあたり、これまでに参加した各受講生達の思いは如何であろうか。ある者は「さあ、いよいよ自分で」と、またある者は「これからどうしようか」と、その思いは様々に行き交っていることであろう。

私はこれまでICAのスタッフの一員として彼らの講習に何度も付き合い、横から眺めてきた。率直な感想としては、この最近の2~3年間で受講生達の研鑽や技術にめざましい進展が見られたと感じている。

ケニアの受講生達にとっては、まさにこれからが自立に向かう新たな起点だと思う。このチャンスを生かすか否かが一人一人の正念場となるであろう。

 

2、ただケニアの講習には残された課題も少なくない。いやむしろ多い。何としてもこれらを乗り越えねば中途挫折になるというのが正直な思いである。

その第一はメンバー達の治療院の開設の急務、第二にナイロビを中心とする第一プロジェクトからの受講生達と、新たに加わった国立マチャコス視覚障害者技術訓練校の卒業生との連携や共同、第三はSOK、JICAそして日本大使館との連携活動、第四に各自の施療技術の向上努力、即ち何よりも各受講生達自身の自立への覚悟と邁進である。

これらの課題を乗り越えるには受講生達の単独プレイでは限界がある。これまで以上に連帯協力や情報交流の必要性の認識が重要と思われる。尤もこれらの課題は今まで充分手が届かなかったのではあるが、今や現実味を帯びており、彼らの期待が確実に叶えられそうだというのが私の実感である。

思えば盲留学生達の要請により、1999年にナイロビで初めてあん摩の公開デモを行い、2004年からはJICAの委託を受けて第一プロジェクトを開始。

10人のケニア人視覚障害者を対象に、全身あん摩の技術講習を開催した。以来2006年にはマチャコス校に当時のサヤ校長の尽力であん摩指圧コースが新設。更に2009年からJICAの委託を受けてケニア第二プロジェクトが開始された。

確かに各受講生達が抱える個別の困難な事情と、私共ICAの活動には先が読めない多くの困難な問題が待ち受けていた。

しかしその都度予想困難な障壁を乗り越え、これらをくぐり抜けてきた。その過程で「やれば出来るのだ」という不思議な実感と自信、貴重な経験を手にすることが出来た。ここに来るまでには時間はかかったが、それを充分取り戻すほどの成果が皆の手の内に残ったという思いである。

 

3、ところで私事で恐縮ではあるが、1995年に名古屋でNGO団体「セナール・スーダンの会」を立ち上げた。

それは公立盲学校のある日本にスーダンの視覚障害学生を招いて留学させ、彼らが日本のあん摩鍼灸技術の国家資格を取得した後、母国に指導者として帰国してもらい、彼ら自身によって同胞の盲人達の自活、自立を支援することを夢見たことから始まった。

その夢の実現のために、わが金理事長の当時の社会福祉法人に窓口となってもらったのが1998年で今から約14年前のことである。金理事長の尽力で順次来日し留学生となった8名程のスーダン人盲学生達の数人が日本のあん摩鍼灸国家試験にパスし資格を取得することができた。

しかしながら肝心の彼らの母国や社会は現在に至るまで貧困な経済状態で行き詰まり、働く場所がない。行く先がないため、やむをえず彼らはそのまま日本で留学生活を継続し、みな奨学金を得て日本の大学の専門学部へ進学した。

新たにパソコンのプログラム研究や技術習得を求め、さらには上級の大学院に進んで国際平和学関係の研究や社会福祉関係の研究、コンピューター技術研究等々を現在もなお続けている。

彼らの、見えないハンディをものともしない向学心や自助努力には敬服するばかりである。日本に留学中ながらサポーター達と共に障害者支援のNPO法人を立ち上げた者もいる。

更に最近、彼らの胸中にあった同胞や障害学生達への支援の思いが開花し、支援者達を拡げて遠く離れた首都ハルツーム市内の大学に働きかけ、同胞視覚障害者達に対しコンピューター技術の導入や技術紹介或いは点字の普及、盲人サッカーのスポーツ交流等に力を貸しているという活動報告も聴いている。

彼らの願いであるところの日本で学んだあん摩鍼灸技術を母国スーダンで生かすことは現実には困難な状況である。しかし自分達や同胞達に対する自立への願いはますます膨らみ、今日その自信と情熱、責任感を揺るがすことはない。その話を聴いていると彼らが視覚障害の友人達にとって希望の星になっていることは疑いない。

 

4、そこで私はつい先頃の5月中旬に、我々の「セナール・スーダンの会」のハルツーム支部事務所責任者であるモハメド・イサム氏に連絡をして、この7月末頃、久しぶりにスーダンの盲学校や大学の視覚障害者達の研修現場を再度訪れたい旨の希望を伝えた。

しかし彼の返事は思いがけず、昨年の南スーダンが分離独立して以降、残念ながら北側のスーダンも経済不安や国全体に広がる飢餓、貧困の状況が著しく、国民にお金があれば南スーダンとの対決に備える軍事費にすべて回されてしまうとのことで、暫くは様子を見ながら待って欲しいということであった。

彼の胸中からはえも言われぬ苦渋と無念さがひしひしと伝わってきた。なるほど最近5月中旬の新聞報道によれば、「スーダン大統領、南スーダン打倒宣言」として同大統領は昨年7月に独立した南スーダン政府の打倒を宣言、国境や油田を巡る両国の衝突が激化し、全面戦争が懸念されている、との記事がいくつか目についた。宗教対立も根底にあるという。

 

 

5.   確かに1999年に始まり、約13年に係るこのケニアでのICAの活動は、当初の手探り状態からすれば予想できない程の進展である。

それには極めて多くの方々や団体の理解と親身の協力に支えられており、幸運に恵まれてきた。例えばドイツに基盤を置くナイロビのカウンターパートナーのNGO法人「SOK」事務所(ゲノ氏代表)の協力、在ケニア日本大使やJICAを中心とする財政的、行政的サポートなどは言葉に尽くせない感がする。またICAを支える会員の方々の理解と有形無形の奉仕支援があればこそとの感である。

従ってケニアの受講生達が、この第二プロジェクトが終了したことを契機に、いよいよ 各自の道を切り開いて行くべく決意していただきたい。それは自分たちの為だけでなく、同胞同僚たちへの見えない責任でもあると思われる。

ケニアの視覚障害者達自身による自立活動の進展が、他の発展途上国の盲人同胞達に対する手本になると確信している。

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平成23年度 特定非営利活動にかかわる事業会計 収支計算書

平成23年4月1日から平成24年3月31日まで 

 

科目

金額(単位:円)

Ⅰ 経常収入の部

 1 会費・入会金収入

 2 事業費収入

 3 寄付金収入

  4 雑収入

 

110,000

2,470,692

1,083,420

6,890

経常収入合計

3,671,002

Ⅱ経常支出の部

 1事業費

 2管理費

 

2,953,783

869,361

経常支出合計

3,823,144

経常収支差額

-152,142

Ⅲその他資金収入の部

Ⅳその他資金支出の部

0

0

当期収支差額

-152,142

前期繰越収支差額

5,630,080

次期繰越収支差額

5,477,938