NPO法人 視覚障がい者国際協力協会(ICA)

視覚障がい者の自立を目指して

あいか通信57号(2011年7月号)

        

             残暑お見舞い申し上げます

                               金 治憲

残暑の厳しい毎日が続いていますが、皆さま、お変わりありませんか?先日、南半球ケニアの冬から猛暑の日本へ戻って参りました。

先回の会報で、今年度のご寄付をお願いしましたところ、多くの方々からご厚志が寄せられました。相変わらずの厳しい経済状況の中、心より感謝申し上げます。

今後とも引き続きご無理のない範囲で、どうぞよろしくお願いいたします。

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      うれしいサプライズ ―2回のデモンストレーション

さて、今回、第2プロジェクト第5期ケニア講習会を実施いたしました。

講習最終日、8月6日、土曜日の午後はあん摩/指圧のデモンストレーションを行う予定で日本大使館の広報文化センターを会場として予約していたのですが、開始まで後1カ月という頃に

「あん摩/指圧は現地のケニア人に広く知られるようにならなければ市場として広がってはいかない。日本大使館までわざわざ足を運ぶ人は限られているのではないか、今回はこちらから街に出て行ってやってみてはどうだろう? ショッピングセンタ―の一画を借りるには費用はどれくらい?」

「そちらをやろうということになると早く大使館をキャンセルしなければ・・・」

そんなことをJICAケニア事務所の担当者に相談していた時、その担当者から思わぬ電話が入りました。内容は、高田稔久大使が、この活動を出来るだけ支援したいと仰って、ケニアでは実施に向けて大使館、JICAケニア事務所が動いているとのこと。

 

今回のデモンストレーションは昼・夜の二部制にして、昼の部はJICA・ICA・SOKの主催とし、一般市民やホテル業者、医療関係者などに広く宣伝する。

夜は大使が主催者として、教育省、公衆衛生省、ジェンダー省、大学、ホテル業界、医療機関などの要人を大使公邸に招き、ゲストを対象に受講生があん摩/指圧を施術し、それぞれの分野の要人たちに体験してもらって、あん摩/指圧をアピールしようというものでした。

前回の講習会でケニアに行った時、大使が交代されたとのことで表敬訪問しました。ナイロビでは数人の受講生が出張治療をしていると話すと、「実は私もこういうものを持っているのですが・・・」と2枚の名刺を出されました。見せていただくと、受講生たちの名前でした。「それでは是非体験してみてください。疲れがほぐれます」とお薦めしたことを思い出しました。

関心をお持ちなのだなあと思いましたが、それにしても、早速にこんな形で支援してくださるとは思いもしなかったので、驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。

ケニア到着後、大使館、JICAの担当者、マチャコス校あん摩/指圧コース講師で青年海外協力隊員の徳永さんと最終的な打合せを済ませました。

当日、JICA で用意してくれたマイクロバスで大使館に向かいました。会場に到着すると真白なシーツを敷いた畳一枚のベッドが10台設置され、真白な枕、頭を乗せる部分に敷く布の代用に紙ナプキンも用意されていました。このベッドは、徳永さんが日本人学校から、箱型の椅子と畳を借りてきて、臨時に治療用ベッドとして設置されたものでした。

今までのデモンストレーションでは、何台ものベッドを調達すること、ましてや真白のシーツや新品の枕を用意することなど考えられず、椅子を並べて座位のマッサージを中心に行って来ました。が、今回は受講生16名全員が43名の体験希望者に全身あん摩を施術することができました。

午後2時、デモンストレーションはカウンターパートナーのSOKディレクター、ゲノさんの軽妙な司会で進められました。会場では、野口英世賞受賞者のウエレ博士、パラリンピック、マラソンでゴールドメダリストの視覚障害者ワニョイケ選手も紹介され、それぞれに短いスピーチをいただきました。

この時の参加者は記名されたものでは約50名でしたが、途中から入って来る人も多く、80名前後ではないかと思いました。午後4時半、片付けもすべて終わり、6名の受講生とスタッフ一同はそのまま大使公邸へ向かいました。

大使公邸は大きな木の茂る森に囲まれた静かな所にありました。通されたパーティールームには広大な庭園に面したテラスがあり、あおあおと広がる芝生のなかに美しく映える木々が見渡せました。

早速にスタッフ一同でそのパーティールームに4台のベッドとパーティションを設置して準備完了。パーティ開始まで受講生たちと庭を散策。小鳥のさえずりと、ナイロビ市内ではなかなか味わえない澄んだ空気を堪能しました。

7時、金理事長の挨拶と受講生たちの自己紹介から施術はスタート。ゲスト、受講生それぞれに代わる代わる軽食をとりながら受講生一人が大体4・5名ずつに施術したでしょうか、ゲストの方々がひととおりあん摩/指圧体験を終えられた9時頃、パーティは終了し、片付け後、食事をできなかった人たちの食事、ホッと一息のお茶をいただいて10時過ぎ、大使に見送られてこの貴重な一日を提供して下さったことを感謝しつつそれぞれ帰途につきました。

翌日からの4日間は、この日大勢の人々からいただいた支援や励ましをバネに、第3プロジェクトとでも言うべき次のステップを目指して6つの公的機関、視覚障害者関係のNGOを訪問して資料・情報収集をしました。今までの活動につなげて、これからどう有効に展開してゆくべきかが大きな課題です。           (事務局)

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           ケニア第2プロジェクト第5期を終えて

                           講師 宇和野 康弘

第5期の講習会は8月1日から6日間ナイロビのWMCAで開催されました。第2プロジェクトでは3年間で6回の講習会を計画していますが今回はその5回目になります。

日本からは金理事長、事務局の森山さん、会員の青山さん、講師として私、宇和野の4名が行きました。現地ではいつものようにSOKのゲノさん、通訳にジェンガさん、フィリゴナさん、パペチュアさんが当たりました。またケニア在住の土方さんとマチャコス校の徳永さんにも協力いただいて実施されました。

今回の受講生は16名で女性12名、男性4名です。受講生の顔触れも回を追うごとに新顔が増えています。ICAが2004年に実施した第1プロジェクトの修了者7名に対して9名はマチャコス校の卒業生です。その中には今回初めて受講する2名も含まれています。

第2プロジェクトではあん摩に必要な基礎医学の知識と実際の施術で遭遇しやすい病気の知識やその施術法などを中心に午前は講義、午後は実技を行っています。

午前の講義では血液、心臓、血管と血液循環のしくみを主にとりあげました。講習会用に独自に作った英文テキストに基づいて、通訳者を介し講義する形式です。

受講生は率直な質問を活発に出してくれるので講義する立場としては理解してくれているかどうかが良く分かります。質問によっては話題が次から次へと広がっていくので途中でストップをかける場面もしばしばです。

受講生の中にはいろいろな患者を扱っている人もいて、質問の内容も実体験からくる具体的なものも増えてきています。

講習会4日目に筆記試験を行いました。昨年は問題を読み上げ回答を単語で筆記してもらう形式でおこなったところ、捗捗しい結果が得られませんでした。そこで、今年は問題を三者択一形式にして問題用紙を配布して回答を筆記する方法に変えました。成績は平均75.4点で、良い結果でした。

午後は毎日実技です。会場に3台のベッドとフロアに2枚のカーペットを敷いて同時に6組12名が練習できるようにセットしました。今回も講習会最終日にデモンストレーションが予定されていました。3月は椅子に座って上半身に施術したので今回は希望も出ているうつ伏せでの、全身施術を行うことになりました。全身を15分~20分で施術するパターンです。

はじめに書いたように16名の受講生の技術レベルにはかなりバラつきが見られました。個人の能力差やセンスの良し悪し以外に、あん摩を中心に学んできたICA出身者と指圧を中心に学んできたマチャコス出身者との違い、セラピストとしての経歴の長さや実践量の差が原因と考えられます。

施術を受けてもどこか物足りなさが残ります。施術する部位、いわゆるツボどころの捉え方とそこへ加える力度の強弱の加減などは共通の課題と言えます。個別指導にもっと多くの時間を割くことができれば、との反省が強く残りました。

デモンストレーションは8月6日に日本大使館と大使公邸の2か所で行われました。最初は午後2時から4時まで日本大使館で行われました。会場には膝より低い台の上にシーツで覆った畳を1枚載せて作ったベッドが10台用意されました。

およそ2時間の間に16名で43名に施術しました。日本人が多いのかなと思いましたが、ケニア人やケニア在住の欧米人もいて盛会でした。

さらにその後、午後6時からは場所を大使公邸に移し、大使が招待したケニアの政財界の有力者にあん摩指圧を知ってもらうためのデモンストレーションが行われました。ここでは受講生の中から選ばれた6名が施術に当たりました。大使館から移送したベッドを4台使い28名の招待者にあん摩指圧を体験してもらうことができました。

招待者の顔触れは教育省はじめ政府高官、銀行の頭取、ホテルの経営者などの経済人など、今後ケニアにあん摩指圧を定着させていくうえで力を借りなければならない方々でした。公邸でのこの企画は高田大使の発案とききました。これが今後の新たな展開へつながってくれれば、と願いたいところです。

第2プロジェクトは来年2月で終了します、ICAとマチャコス校が養成したセラピストの数は合わせて20名を超えました。これまでのようにマーケットを日本人と一部の欧米人だけに求めていたのでは先が見えています。

あん摩指圧をケニア人の中にどれだけ浸透させられるか、また受け入れられるだけの技量をどうやって身につけていくかがますます問われてきていると感じました。