NPO法人 視覚障がい者国際協力協会(ICA)

視覚障がい者の自立を目指して

あいか通信51号(2010年7月号)

             残暑お見舞い申し上げます

                             理事長 金治憲

 

立秋も過ぎました。こころなしか朝夕涼しく感じられるようになりましたが、記録的な猛暑のこの夏、皆さまお元気で過ごされましたでしょうか。

前号で、今年度のご寄付をお願いしたところ、多くの方々からご協力をいただきました。経済状況がそれぞれに厳しいなか、感謝に堪えません。

皆さまからのご支援を励みに、いっそう事業遂行に努力してまいります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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               ケニア講習会から

7 月24 日から猛暑の東京を出発、ケニアでの講習会を終えて8 月3 日の夜、無事に帰って来ました。講習会内容については、主に講師を務めてくれた宇和野さんが詳細に報告してくださっていますので、そちらをご覧ください。

ケニアは南半球なので今が真冬です。現地の人々は毛のセーターや帽子、ヤッケといった防寒のいでたちです。アフリカ、といえば、まず皆さん‘暑い’と連想されるかもしれませんが主都ナイロビは海抜1700m のところにあり、日本でいう‘爽やかな高原’といった感じで大変気候の良い所です。しかし、温暖化のせいでしょうか、以前に比べて雨が多くなったとのこと、今回もカラッと晴れた日は少なかったです。

さて、今回の講習会、今年3 月第2 期が終了した段階では8 月2 日から、毎回、会場としてきたYMCA で開催する予定だったのですが、8 月4 日にケニアの憲法改正にあたって国民投票が行われるというので、懸念される投票日前後の治安の悪化による混乱を避けて、一週間、日程を前倒しすることにしました。

そのため、予約していたYMCA を、変更した日程でとることができませんでした。折悪しく、この日程と重なってナイロビでアフリカ陸上選手権大会が開催されるとのことで、講習会場にできるような宿泊施設はなかなか予約がとりにくかったようです。それでもSOK の努力で、どうにかYMCA の近くにあるリリイ・ホステルを予約することができ、そこに会場を移して開催しました。

そこは3 階建ての小さな建物でしたからどの部屋も狭く、実技ともなると治療用ベッドを持ち込むため、2 部屋に分けて行わざるを得ませんでした。食堂もないので、使っていた教室を早替わりで食堂に使う、といった状況で大変不便でした。

最も不便だったのは、水が出ない、トイレの便座が無いなど。講習生たちの不満は大変なものでした。次回は必ずYMCA を確保する、と言うと一斉に拍手が起こるほどでした。

でも、いいこともありました。ここで働いている人たちは、見えない人たちが、大勢、客としてやって来るというので、あんなこともこんなことも手助けしたいと、待ち構えていたのに、何もかも自分たちでやってしまう彼らに驚き、思いがけなく、あん摩までやってもらってとても気持ち良かった、と大変喜んでくれました。次回の講習会も是非来て欲しいとのことでした。

今までの講習生のうち、欠席者は育児中の3 人(この中の一人は6 カ月になる息子を皆に見せに来て、皆の祝福を受けていました)、職場を休めなくて来られなかった1 、の4 人でした。

当初からの受講生、ジョスパット君、彼は弱視なので講習期間中はいつも何くれとなく皆の世話をしてくれる優しい青年ですが、うれしい報告をしてくれました。

ナイロビから遠いサンブルに住んでいた彼にあん摩の仕事はなく、それでも母を患者にして毎日あん摩をしています、といっては講習会に参加してあん摩を学びつつ、教師を目指して勉強していました。その彼が今度、成人教育教師に任命され、配属先の通知を待っているというのです。

彼の説明によると、スワヒリ語と英語の読み書きを、1 日2 時間18 歳から45 歳までの人たちに教える。授業は午後2 時から4 時までなので、午前中はあん摩もできる、と喜んでいました。

彼は講習期間中、時間をとって教育省に行き配属先からの辞令をもらって来ました。配属先は彼の故郷であるサンブルでした。8 月2 日にサンブル東事務所に行くように、同じ内容でサンブル東事務所にはすでに通知してある、と書かれていました。

教室の皆に辞令を読み聞かせ、彼が故郷で成人教育教師として働くことになったことを紹介すると、一斉に大きな拍手が起き、皆で彼の新しいスタートを喜び合いました。講習が終わって別れる時、私が「次の講習会には来られないね」と言うと「許可をもらって必ず来ます」と、心強く言ってくれました。なにはともあれ、自立の目途が立ったのです。これほどうれしいことはありません。

もうひとつ、うれしい報告があります。日本へ留学して、あん摩・鍼・灸の資格を取得したパペチュアさんが講習に来てくれて、フィリゴナさんと一緒に通訳をしてくれました。かねがね来て欲しいと思っていたパペチュアさんが、また、皆と一緒になって講習会に協力してくれる、これはほんとにうれしいことでした。

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       ケニア第2 プロジェクト第3 期の講習会を終えて

                               宇和野康弘

 

ケニア第二プロジェクト、2年目の前期(第3 期)の講習は、7 月26日か31 日までの6日間、ナイロビ市内のリリイ・ホステルを会場にして行われました。

今回の受講者は13 名で、内訳は2004 年の第一プロジェクト修了者が8 名、マチャコス視覚障害者技術訓練校あん摩指圧コースの第1 期修了者が3 名、第2 期の生徒〈私たちは初めて会いました〉が2 名です。女性が9 名、男性は4 名、点字使用者が11 名、活字使用者が2 名。日本からは金理事長、佐藤静雄さん、宇和野の3 名でしたが、現地ではカウンター・パートナーであるSOKのゲノさん、キャロラインさんの他に、マチャコス校であん摩・指圧を指導している青年海外協力隊員の徳永さん、現地でNPOの活動をしている土方さん(あん摩・鍼・灸師)も期間中、終始補助をしてくださったため大変助かりました。また、田村良雄さんには、いつもながら大変お世話になりました。

通訳はいつものフィリゴナさんと、今回初めて、パペチュアさんが加わりました。彼女はフィリゴナさんと同じく、日本の盲学校であん摩・鍼・灸を学び資格を得て2005 年に帰国し、現在は、大学で栄養学を学んでいるそうです。

講習会は午前9 時から午後4 時40 分まで、一コマ90 分の授業を1 日4コマ行いました。主なテーマは、[下肢の骨・関節・筋]と[下肢のあん摩・指圧法]です。

下肢の筋について自分の身体で部位を確認しながら、あん摩や指圧の方法を学びました。さらに各関節の正常な動きと、それを行う筋を、実際に関節を動かしながら理解してもらいました。これらの知識の応用として、代表的な筋のストレッチ法も学びました。

講習会3 日目には去年からの内容も範囲に含めて筆記試験を実施しました。結果は100 点法で、50 点を上回った人が3 人だけという残念な結果でした。去年、配布したテキストを半数が紛失して今回持参していないなど、まだまだ取組の甘さを感じさせられた一面でした。

ケニアの視覚障害者にとって、テキスト、筆記用具、点字用紙など学習上不可欠ともいえる教材や教具が容易に手に入りにくいこともあってか、読み書き中心の学習よりも、聞き覚え中心の学習が習慣になっているとも聞きます。

昨年の講習会を終えて感じた点の一つに、身体の仕組みと働きについて、一般向けに英語で書かれた本があったら――ということがありました。帰ってから地元の英語点訳ボランティアの方々に相談したところ、アメリカの出版社から家庭医学百科として出版されている『Body Systems』という本が、内容的に手ごろと考え点訳していただきました。

点字で全4 巻になりましたが、今回1 セット持参し、SOK の事務所に置いて貸出してもらうことにしました。

今回実技は講習時間のほぼ半分をかけて行いました。そのなかで身体の部位による力度や手の動きのおおきさなどの違い、といった細かな点を一人一人みてみました。受講者によっては、あん摩よりも指圧の方が向いていると思われる人もいて、個人の特性に合ったあん摩・指圧法を指導する必要を感じました。一年前に比べて、受講者間の技術の差が小さくなってきていると思います。

第二プロジェクトは、今回の講習会でちょうど中間地点にさしかかりました。半数以上の受講者はすでに、あん摩・指圧で何らかの収入を得て生活できるようになっていることはプロジェクト当初の目的の何割かは実現しつつあるとも言えます。

しかし、課題もまだ多くあります。このプロジェクトの成果が永続性を持ってケニアに根付くよう、みなさんと共に支援していきたいと思いました。