NPO法人 視覚障がい者国際協力協会(ICA)

視覚障がい者の自立を目指して

あいか通信40号 2008年9月号

           『盲留学生』を上梓しました

                            理事長 金治憲

10月に入るやさすがに秋晴れの良い天気が続いています。皆様お元気でお過ごしのことと思います。この「あいか通信40号」は会員以外の多くの方々へもお送りさせていただいております。

実は2年前に《国際盲人クラブ》創立35周年と、《視覚障害者国際協力協会》創立5周年記念事業の一つとして協会の歩みを発行する予定でしたが、予定していた出版社が変わるなどの事情により、このたび、ようやく日の目を見ることとなりました。

この本は、今までお世話になった方々、協会を支え続けてくださった会員のみなさま、盲留学生の受入れにご協力いただいた盲学校の先生方、ホームステイを引き受けていただいた方々に、感謝の気持ちを込めて書いたこの35年間の記録です。ここに紙面を借りて厚くお礼申し上げます。

 《国際盲人クラブ》時代は30年間で50名の盲留学生を受け入れました。彼等は日本各地の盲学校で学び、半数以上は帰国しました。

帰国後、盲学校の教師になったり、団体が運営するあん摩研修所で教えたり、治療院を開設するなど、自立して生活しています。ところが、韓国と台湾以外の元盲留学生たちからは「自分の国に拠点となる治療院を建ててもらわないと日本で勉強したことが生かせない」 「自分の国であん摩のデモンストレーションをして欲しい」などの要望が寄せられるようになりました。

日本で勉強したことが生かせないということでは、今まで協力いただいた方々にも申し訳ない、確かに彼らの国では、技術を学んで帰国しても、さあ自立へ、というには厳しい状況があります。そこで海外治療院開設と現地での技術指導を目的とした 《視覚障害者国際協力協会》 を創立しました。

具体的な事業としてはインドネシアで治療院を開設したり、ケニアであん摩講習会を開いています。

2004年から開始したケニアプロジェクトでは既に受講生のうち何人かは自立を果たし、また当協会の働きかけにより、国立マチャコス視覚障害者技術訓練校に〈あん摩コース〉が新設される等、一定の成果も見えてきました。当協会の目標 -一人でも多く、自立できる視覚障害者を育てる-を達成するために皆様のご協力をあおぎながら微力を注いでまいります。

なお、KF会館の管理人を務め、その後も続けて協会をささえ、この本の編集作業も手伝ってくれた荒木久子さんが刊行を待たずに亡くなったことが残念でなりません。また、出版にご尽力いただいた元朝日新聞記者の岡村健さん、毎日新聞社出版企画室の方々に厚くお礼申しあげます。

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本のご案内

■書名:盲留学生

■定価:1500円  

*定価1500円となっていますが、事務局にお申込みいただければ1300円(税込)でお送りします。送料無料です。

■体裁:四六判上製・本文214ページ

■発行予定日:2008年10月25日

■発行:毎日新聞社

 

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              盲留学生解説

                フリーライター(元朝日新聞記者) 岡村健

4歳で失明した少年はどのように生きたか。だれもが想像し得ない物語をキム・チーフンさんは生きた。本書は、その半生を自らつづった記録である。

韓国の田舎の村から首都ソウルへ、そして日本の盲学校を目ざす。両親を説き伏せ、日本語を習得し、全盲のハンデ、制度の壁を突破してあん摩の資格を獲得し、結婚して幸福を手にした。だが、本当の物語はここから始まる。

「自立を果たせたのは、数多くの人々の支えがあったからだ。自分が歩んだ道を、世界の視覚障害者に開くことで、その恩に報いたい」。それが、キムさんの胸に宿った「恩返し」であり、一生をかけて取り組む原動力となった。

あん摩は、わが国で視覚障害者の職業として古くから定着してきた。「あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師」の資格が法に定められ、盲学校で習得することができる。キムさんはアジア各国から視覚障害者を招き、この資格を取得する「盲留学生」の受け入れを始める。

といって、受け入れを助けるなんの制度があるわけではない。そればかりか、身体障害者の入国を困難にする差別的な規定があった時代である。入国から盲学校入学、そして日本語や生活習慣の習得と、ひとつひとつが難問である。それを解決しながら盲留学生を増やしていった。

たくさんの国から盲留学生が来るようになって、新たな難問が出てくる。あん摩がまったく知られていない国では、せっかく資格を取って帰国しても、生かす術がない。それならばと、その国々に出かける。あん摩のデモンストレーションをやり、技術講習会を開き、治療院を開設する。こうしてインドネシアで、ケニアで盲留学生の自立が実現している。

ふつうなら立ちすくみ、あきらめてしまう難問がつぎつぎに   立ちはだかる。それをひるむことなく突破してゆく様子に、冒険小説を地で行く爽快感を味わうことが出来る。

「至福の時」はこんな場面で描かれる。政府のODAで、ケニアで大がかりに展開した技術講習。しかし、翌年のフォローアップには何の公的援助もなく、たった一人で出かける。そこで再会した視覚障害者たちは希望と自信にあふれ、底抜けに明るい笑い声がキムさんを包んだ。

私は偶然の成り行きで、出版のお手伝いをすることになった。そのお陰で、第一読者として素晴らしい生き方の記録を読み、さらにキムさんとじかにお付き合いする幸運を手にした。

本書の読者は、極めて具体的な記述によって、視覚障害者について、国際協力の実際について理解を深めるだろう。そして何より、キムさんの人となりと行動に勇気づけられるに違いない。

利益追求の波が世界を覆い、格差と環境破壊が深刻化する現代社会。だからこそ、人間への信頼を回復させてくれるこの書を手に取っていただきたい。皆さんの心に灯がともるに違いない。

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◇本をお読みいただいた方、事務局あてに感想などお寄せいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

◇本の宣伝用チラシができています。宣伝をお願いできる方、ご連絡くだされば、お送りいたします。

 

出版にかかわる諸業務のため、会報の発行が遅れました。ご了承ください。