NPO法人 視覚障がい者国際協力協会(ICA)

視覚障がい者の自立を目指して

あいか通信29号 2006年11月

             一歩進んだケニアのあん摩事情

                        理事長  金 治憲

去る11月20日から30日まで「ケニア視覚障害者達との交流ツアー」とあん摩技術の研修を終えて帰ってきました。今回のケニアは珍しく、毎日のように雨が降りました。雨が降るといっても日本のようにずっと降り続くのではなく、ちょっと降ったらパッと晴れる感じです。これも地球温暖化の影響でしょうか。でも雨のせいで、車で走っていても埃が立たなくて助かりました。

さて、嬉しいニュースからご報告します。11月22日、日本からの9人と現地カウンターパートナーであるSOKのゲノさん、通訳として元盲留学生のフィリゴナさん、計11人はナイロビから車で2時間足らずのマチャコス視覚障害者技術訓練校に向かいました。サヤ校長と青年海外協力隊員の五味哲也さん、それに多くの先生達が迎えてくれました。五味さんは先週着任したばかりでした。学校は今日から休みとのことでしたが、木工や編み物、手芸、皮のなめしと革製品などの現場を見学した後校長先生と話し合いをしました。ここではあん摩に関することだけ紹介します。サヤ校長の説明によれば、「既に教育省からあん摩技術指導の許可が下りているので来年1月から始めたい。現在希望者は20人ほどいるが、先ずは3、4人ぐらいで始めたい」とのこと。

実は私どもの研修生の一人エバリンさんがこの学校の生徒でもあるので、彼女が教師や生徒を対象にあん摩のデモンストレーションを行った結果、希望者が増えたとの説明でした。

私は、協力隊員も着任したのであん摩の指導を始めるように校長先生にお願いする気持ちで来たのに、こんなに進んだ状況にビックリし、大変嬉しい思いをしました。

また、JICAケニア事務所を訪問した際、加納所長は「日本の国会議員の方が視察に来られたとき、研修生達からあん摩施術を受けて大変喜ばれ、JICAとしても嬉しかったです」と話されました。

研修生達はテレビに出演する機会があり、あん摩の宣伝にも役立っているようでした。地方にいる研修生達はあん摩がほとんど収入に結び付いておりません。そこで、マサイ・マラにある日本人経営のホテルで働かせて欲しいと申し入れたところ、快く引き受けてくれました。

 

今月は「年末ご寄付」をお願いする月でもあります。いつもながら何かと物入りの多い年末にご寄付をお願いすることは大変心苦しいのですが、協会の存在意義と果たすべき役割をご理解いただき、ご支援願えれば幸いです。既に送ってくださった方もいらっしゃいますが、事務処理上全員の方に振替用紙を同封させていただきます。ご了承下さい。

マチャコスであん摩の技術指導が始まることは大いに喜ばしいことですが、私どもの果たすべき役割はさらに重くなります。というのは、今も研修生達から要望が出ております解剖学や生理学などの講義は、私どもの協会が進めるべきだと考えております。関係者とも相談しながら彼らに役立つ事業を行ってまいりたいと思います。どうか皆様のご支援・ご指導のほど重ねてお願いいたします。

寒さに向かいますが、ご健康にはくれぐれもご留意下さい。

 

***お知らせ******************************

2007年1月18日から21日までの予定で、韓国・台湾・日本の視覚障害者たちが札幌で交流会を開きます。18日の夜は歓迎会、19日は視聴覚障害者情報センターと理療研修センターを見学、20日は「歩くスキー」を体験した後、日本の温泉も体験します。

参加ご希望の方は事務局へご連絡下さい。締め切りは1月10日。

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          ケニアの視覚障害者施設を訪ねて

                        名古屋市  青山 章行

今年はICB創立35周年、あいか創立5周年にあたります。それを記念する事業の一環として行われた「ケニア視覚障害者達との交流ツアー」に参加しました。私は次男と一緒に加えてもらいましたが、他の人々と同じく、この研修は彼の地の視覚障害者にとって、本当に実りの多い事業であるという確信を抱いて帰ってまいりました。1週間経った今日でも、訓練生や参加した全ての人達の熱意による刺激と善意に支えられて、私の身体全体に未だ興奮がさめやらないでおります。

参加メンバーは9名で、11月20日夜、名古屋の中部国際空港を出発し、28日の夜帰国という旅程でありました。現地ケニアでは、マチャコスの視覚障害者技術訓練校のスタッフ、SOK(ケニアにおける協力団体)事務所代表者夫妻、現地10名の日本式あん摩研修生とフィリゴナさん(ジェンガ君は都合により今回欠席)の大歓迎を受け、彼らの訓練や語らいとその活動報告に励まされて帰国しました。

現地入りの明くる日11月22日(水)はナイロビの南東方約65kmに位置するマチャコスの視覚障害者技術訓練校(公立)訪問。熱意と情熱にあふれる小柄なサヤ校長を始め、担当のカテリーヌ先生他多くのスタッフに迎えられました。あいにく訪問した当日から1月初旬まで全校休暇に入るという折柄でしたが、各訓練室では生徒の皆さんが私達に自分が習得中の技術を披露してくれたり、また自分達が造った見事な成果物を実際に見せてくれました。

この訓練校には15歳から45歳くらいまでの訓練生がケニア全土から集まってきており、学校としては全盲の生徒を中心に、一部晴眼者をも受け入れるとのこと。毎年80人から120人くらいの生徒が在籍してこの訓練校で学んでいるようです。

内容としては家具・木工等の技術、革製品や靴の製造修理、洋服・刺繍等の手芸、建築基礎に用いるブロック材の製造・習得等、幅広い技術と作業を手がけており、私達もその訓練現場に案内されて感嘆した次第です。また各生徒の状況を考慮し、これに合わせた歩行訓練やタイピング等の日常の生活訓練も適宜行っている様子でした。

生徒達はケニア国内のみならず、中には遠く外国からも訓練生がやって来て学んでいるとのこと。この訓練校の卒業生達は場合により、別の場所に赴いて自ら教えることもあるという。また喜ばしいことは、最近ここでの訓練を終了してさらに自分で国外に出て活躍したいという希望者も出ており、例えばソマリアの戦争による失明者のために靴を製造・修理する技術を教えようと「NGO」メンバーとして派遣されるとか、ルワンダで自分と同じ条件下にある視覚障害者に自分の習得した技術を教えに行こうとする修了生もいるそうです。

また現に訓練中の生徒で、いずれは西側隣接のウガンダに赴き視覚障害者のために働きたいという志を抱いて学んでいる女子生徒もいました。私はおぼつかない英語で彼女から話を聞き取るうちに、自分の目の障害(全盲)をものともしない、その学生さんの気高い心意気に強く胸を打たれました。

ところで、JICAケニア事務所の協力を得て、当技術訓練校ではこの11月に日本人の針灸・あん摩スタッフ(五味哲也さん)迎えることが出来たと、サヤ校長は彼を紹介してくれました。校長は「ケニア政府は来年1月からこの学校で“日本式あん摩”の訓練コースを設けることを公的に許可し認めてくれた。皆さんの協力と援助のお陰で私共の希望が叶えられて、当校では五味先生とカテリーヌ先生が中心となり、いよいよ日本式あん摩の指導をしていくことが出来るようになったのです。」と喜びを持って語られました。そのためにも訓練生達に教科書が早く入手支給することが出来れば、と具体的な希望を話されたのが印象に残ります。

サヤ校長の話は尽きることなく、その「パナポニアパナンジア」(=意志あるところ道は必ず開ける)という、我が金理事長の「パイオニアスピリット」の精神とも呼応して、深い感銘を受けた次第です。しばしの時間、担当のカテリーヌ先生や五味さんともお話を伺うことが出来ましたが、お二人の「日本式あん摩」の普及に対する責任感と期待は並々ならぬ様子でありました。

夕刻再びナイロビに戻り、2004年以来熱い援助とサポートを受けている「JICAケニア事務所」にお礼と報告のため、訪問いたしました。加納良昭所長以下協力援助の担当スタッフの皆さんの手厚い出迎えを受け、心からなる激励と謝辞を頂いた次第です。(次号に続く)

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*今まで「マチャコス障害者職業訓練校」と表記しましたが、サヤ校長の名刺によると「マチャコス視覚障害者技術訓練校」となっております。従ってこれからの表記は名刺どおりにします。(事務局)